ライデン民族学博物館のCool Japan特別展を参観。お菊が数えていたお皿はデルフト・ブルーだった?| Museum Volkenkunde, Leiden


オランダの学術都市ライデンには数多くの博物館があります。ライデン民族学博物館は私のお気に入りの博物館の一つで、今回は3回目の参観になります。



今回のオランダ滞在では、2017年の4月14日から9月17日まで開催中のクール・ジャパン特別展を見学することができたので紹介したいと思います。

展示室では現在のアニメやゲームだけでなく、浮世絵など現在の日本のポップカルチャーの元となった要素の展示もあり、日本人でもいろんな発見があり楽しめる展示手法でした。

全体は

戦士:侍、忍者から魔法少女まで
妖怪:江戸時代から現代の妖怪まで
ロボット:ガンダムやエヴァンゲリオンからPepperまで
カワイイ:原宿ファッション、ハローキティ
本質:北斎の浮世絵から現代のファッションまで
漫画:手塚治虫から多様化した漫画の世界
オタク:フィギュアやコスプレ、日本のファン文化
アニメ:庵野秀樹、細田守やスタジオジブリ

の8つのセクションから構成されていました。



特に『妖怪』のセクションでは、北斎の「皿屋敷」などの妖怪を描いたシリーズから貞子にゴジラ、妖怪ウォッチなど、日本人の生活の中で妖怪がどのように描かれてきたかがわかるようになっていたのが印象に残っています。

有名な怪談「お菊」が数えていたのはオランダの有名な染付の陶器デルフト・ブルーのお皿らしいです。あの怪談にオランダの要素があったなんて今回の参観で初めて知りました。




下の動画は民族学博物館の公式チャンネルのものなのですが、このお菊の物語について説明しています(オランダ語)。Pepper君のオランダ語も聞けます。





見世物小屋に飾られていそうな人魚のミイラ。顔やポーズがコミカルでなんだかかわいいですね。オランダ人参観者も興味をそそられるようで、写真を撮っている人をたくさん見かけました。

この特別展のコンセプトは、現在のポップカルチャーにも古くからの妖怪をモチーフとしたキャラクターが登場する、というように感じたのですが、日本人が妖怪とどのように向き合ってきたのかなどが深く分析されていたらもっとよかったかなぁ、とも思いました。

例えばネットで見かけた話なのですが、映画シン・ゴジラにおいて、ゴジラがもたらす災害が、先の大震災と重ねられて解釈されているという話がありました。

民族学の研究でも、人類は人の力ではどうしようもないできごとに出くわすと、人はそれを神や妖怪の仕業だとして受け入れたり、先祖が怒っていると解釈するなどして合理化したという考えがあります。それにより、人々はさまざまな神話を生み出したり、儀式などが形成されていったという論述があります。

日本人にとって妖怪というのも、時代時代で人々が出くわした災害を”合理的に”受け入れる手段として生み出されたという背景があるのではないでしょうか?恥ずかしながら私は人類学専攻でありながら日本の民俗学にはまるっきり疎いので、詳しい人がいたらぜひ教えていただきたいです。

ともかく妖怪が生み出された背景や、現在の漫画やアニメでの妖怪が作品の中でどのような役割を担っているかなどを掘り下げたら、もっと深みのある展示になったと思います。

セーラームーンのセル画

戦士のセクションでは、新旧の侍をテーマにした映画の紹介から漫画のヒーローの紹介がされていその中に戦う女性が主人公の作品のコーナーが設けられていました。

解説ボードには戦う女性の先駆けとして12~13世紀の巴御前が挙げられ、現代ではカードキャプターさくらやまどかマギカなどを代表とする『魔法少女』という、いちジャンルが確立されていることが紹介されていました。

現在の漫画の礎を築いたのは手塚治虫


解説ボードによると、日本の美術の特徴といえば”くっきりとした輪郭線”らしいです。鳥獣戯画のころから漫画風の作風のはしりが見られる…?


『カワイイ』のセクションでは、奈良美智氏の立体作品をはじめ、紅林大空(くればやし はるか)(YouTube)さんによる原宿ファッションの解説と、彼女のプロデュースしたコーディネイトが展示されていました。彼女によると自身のコーディネイトはいろんな色を組み合わせて、自分が楽しく気持ちよくなるために服を選ぶという価値観を映像内で話していました。

奈良美智氏(@michinara3)の作品

世界で知られる『カワイイ』アイコンといえばハロー・キティ

オタクのセクションではファンの文化に焦点が当てられていました。

例えばライブでオタ芸を披露する熱烈なファンの在り方や、コスプレなど作品の二次創作を行うファンの活動などが紹介されていました。解説ボードによると、ファンによる熱心な活動は実は歌舞伎の頃から見られるらしいです。

HKT48のペンライト。キュレーター関係者の中にファンがいたのだろうか?

涼宮ハルヒのフィギュア

オタクセクションの展示室では有名作品の単行本が並んでおり、ちょっとした漫画喫茶か図書館のようになっていました。漫画は実際に手にとって読むことができました。

同じ展示室の一角にはアーケード版のストリート・ファイターや太鼓の達人の機械が設置されており、参観者は実際に遊ぶことができ、子供達に人気がありました。博物館でこのようなゲーム機が設置されるなんて画期的だと思います。

コスプレ衣装

クール・ジャパン特別展は全体としては、現在のポップカルチャーにみられる要素は、実は江戸時代やさらに古い時代に遡ることができる、というのを主軸にしているように感じました。展示されているものも、浮世絵や日本刀から漫画のキャラクターのフィギュアやアーケードゲームなど多岐に渡っており見応えがありました。

またこの民族学博物館は常設展も大きなガラスケースや映像・音楽を用いた迫力のある展示が魅力なのですが、このクール・ジャパン特別展でもその展示手法が生かされていたように思います。特に音楽・照明・映像が融合された入り口すぐのコーナーは迫力があり、展示への期待が盛り上がりました。

このクール・ジャパン特別展は期間限定なのですが、ライデン民俗学博物館の常設展も世界中の様々な民族の工芸品などが展示されており見応えがありますし、各期の特別展も毎回(といっても3回しか参観経験がありませんが…)クオリティが高いのでおすすめの博物館です。

ライデン民族学博物館について

住所・アクセス

Steenstraat 1, 2312 BS Leiden, オランダ
Google map
Leiden Centraal駅から徒歩5分

開館時間

火曜日〜日曜日(および祝日)
10:00-17:00

月曜休館

チケット料金

大人 14€
青年(4歳〜18歳) 6€ (4歳以下は無料)
学生 6 €

ウェブサイト

https://volkenkunde.nl/ (オランダ語/英語)
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